マリー・アントワネット
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首飾り事件

何故民衆がそれほどまでに自分に対して反感を持っているのか、どうしてここまで中傷されるのか、民衆の生活に目を向けて、少しでも浪費を抑えていれば、悲劇的な幕を閉じなくても済んだのかもしれません。
人工的に田舎を作り、ままごと遊びのように過ごしていても、民衆の暮らしを理解したことにはならないのです。そんな暮らしをしている中、有名なあの事件が起きてしまいます。自称、ヴァロア王家の血を引くラ・モット伯爵夫人を名乗る女山師が起こした詐欺事件です。

首飾り事件の概要

首飾りのデザイン画パリで相棒の宝石工・バッサンジュと共に宝石商を営んでいた、ベーマーという男がいました。彼は王室に出入りする、宮廷御用達宝石商として、マリー・アントワネットに宝石を売っていた人物です。

宝石が大好きな王妃に対し、いつも国王に内緒で高価な宝石を調達していました。たまには国王にばれ、返品されたりすることもありましたが、それでも王妃はベーマーにとって金づるに変わりはありませんでした。

ベーマーはルイ15世の寵姫デュ・バリー夫人が購入してくれることを予想して、1774年頃、豪華な首飾りの製作を始めていました。しかし、買ってくれることを予想していたデュ・バリー夫人が、ルイ15世がなくなったために、没落してしまうのです。その矛先は、マリー・アントワネットへと向けられることになります。

ダイヤが540粒使われていて、一番新しいものでも3000年以上前の物を使っていて、ベーマーが八方手を尽くして1粒1粒を探し求め、バッサンジュが丹念に研磨して細工を施した、とんでもない値打ちものだったのです。ほぼ完成していて、現在の金額で数十億円という首飾りを買えるのは、マリー・アントワネットしかいないと考えたのです。この首飾りを集めるために、莫大な借金をしていたバーマーは売り込みを焦りました。

消えた首飾り

事件自体はとても簡単なものでした。1785年2月。王妃が首飾りを購入してくれるとの朗報を聞いて、ベーマーとバッサンジュは吉報をもたらしてくれたロアン枢機卿(すうききょう)の屋敷を訪れます。ロアンは2人に王妃が首飾りを買い上げるとする書類を見せました。

各項目の横には『承認』と記され、『マリー・アントワネット・ド・フランス』と署名されていました。王妃が署名するときは、洗礼名しか書かないことは誰もが知っていることだったにも関わらず。首飾りの支払いは、4回に分けて支払われることになり、首飾りをロアン枢機卿に手渡します。

1回目の支払い日に、ベーマーが妃側近のカンパン夫人に首飾りの代金を請求すると、『詐欺にあったのですよ。王妃は首飾りを受け取ってはいません。』という答えが帰ってきたのです。ロアン枢機卿とマリー・アントワネットの間で、首飾りが忽然と姿を消してしまったのです。ルイ16世は、ロアン枢機卿を逮捕し、裁判にかけることになったのです。これがフランス史上最大のスキャンダルです。

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事件の首謀者

ラ・モット伯爵夫人

実はこの事件には首謀者がいました。自称ラ・モット伯爵夫人です。マリー・アントワネットが首飾りを欲しがっているとロアンに吹き込んだのがこのラ・モット伯爵夫人に他なりませんでした。その頃、ロアン枢機卿はなんとかマリー・アントワネットに取り入ろうとしていましたが、かつてウィーンの宮廷でマリア・テレジアの不興を買ってしまったロアンは、アントワネットにも嫌われていたのです。

宝石商が王妃に首飾りを売りたがっているのを知ったラ・モット伯爵夫人は、ロアン枢機卿を利用し、それまで宮廷御用達女で会った自分の身分を、もっと出世させたいともくろみ、ロアンに首飾りのことを持ちかけます。更には、王妃を語った偽の手紙を渡します。『これまでのことは水に流して旧交を温めましょう』とする内容のもので、200通以上の手紙が2人の間で交わされたとされています。もちろん相手は王妃ではなく、偽の手紙だったのですが……。

ロアンは手紙だけでは物足りなくなり、直接王妃と会いたいと言い出します。そこでラ・モット伯爵夫人は、マリー・アントワネットによく似た娼婦を用意し、月明かりの木陰の下で殆ど言葉も交わさない接見を果たしました。

王妃が自分に会ってくれた以上、王妃の欲しがっている首飾りを献上しなければいけない。そう考えたロアンは、ルイ16世に事後承認させることにし、ラ・モット伯爵夫人の用意した偽の首飾りを購入する旨の書類を用意し、ロアンから宝石商へと書類が渡り、首飾りは宝石商からロアンへ。ロアンからラ・モット伯爵夫人へと渡りました。そして首飾りはバラバラにされてフランスやイギリス各地に売りさばかれてしまったのです。

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事件の結末

事件を耳にしたマリー・アントワネットは激怒しました。自分が毛嫌いしているロアン枢機卿から宝石など買うわけがないと。事件の首謀者はロアンで、自分の名前をかたって宝石を騙し取ったに違いないとルイ16世に訴え、ロアンは宮廷の鏡の間で逮捕され、裁判にかけられることになりました。

この事件には、フランス中が沸きあがりました。事件の中心人物が、王妃と枢機卿ときたら、熱狂せずにはいられません。寵愛の見返りとして首飾りを枢機卿に贈らせたのだとか、枢機卿を利用して、宝石をうりさばいたお金をオーストリアに送っているのだろうなどと言われ、枢機卿は犠牲者、悪いのは王妃だと噂されました。枢機卿の一族は独自に調査を行い、彼が無実で、ラ・モット伯爵婦人が首謀者であるということをつきとめ、関係者が逮捕されました。

裁判の結果、ロアンは無罪になり、民衆からは『万歳』の声があがりました。マリー・アントワネットは悔しさで泣き崩れ、結果を不服としたルイ16世も、裁判官を解雇、ロアンを修道院に隠居させてしまいます。ルイ16世は、高等法院によって無罪を言い渡された枢機卿に対し、国王が罰を与えたことで、民衆はもとより、貴族からの支持も失うことになります。

ラ・モット夫人の結末

事件関係者と共に捕らえられたラ・モット伯爵夫人は、泥棒の頭文字であるVのマークを両肩に烙印されることになりました。その後監獄に送られたラ・モット伯爵婦人は協力者のもとに脱獄し、ロンドンに亡命して回想録を何冊も出しました。その内容は、自分は被害者である、事件の責任は全てマリー・アントワネットにあるとしたものでした。

人々は伯爵夫人に同情的で、益々マリー・アントワネットへの批判は高まっていきます。人々にとって、誰が首謀者でもかまわなかったのです。王妃を中傷するネタに過ぎず、この首飾り事件は、フランス王政が揺らぐきっかけともなりました。

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